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STEP3:入院・手術のはなし
植込み手術の流れ(術前・術中・術後)

担当医師の十分な説明のもと、いよいよペースメーカによる治療を受けることとなりました。

ここでは植込み手術を受けるにあたって、入院から退院までの流れに関して参考となる情報を取り上げますが、疑問点などは担当医師にご相談ください。

ペースメーカ本体装置およびリード植込み手術について

ペーシングシステム植込み手術にあたっては、インフォームドコンセントや入院の手続き、術前の検査、手術、術後管理、そして退院まで、すべて担当医師の指導のもと進められます。

手術前に知っておきたいこと

●インフォームドコンセント:説明と同意(書)
病名、手術(検査・処置)名、手術(検査・処置)予定日、麻酔方法、手術(検査・処置)の目的と方法、その他の手術(検査・処置)オプション、手術(検査・処置)後の経過予測、手術(検査・処置)の危険性と合併症、ほとんど発生しないが可能性がないとはいえない重大な合併症、その他特定医療機器登録制度など、ペースメーカ本体装置およびリード植込み手術について、事前に担当医師より説明を受け、手術への同意が求められることになりますので、その指示に従ってください。

●手術時の合併症
危険は非常に少ないといわれていますが、ペースメーカおよびリード植込み手術中に合併症がおこることもありえます。空気塞栓症(そくせんしょう)、血栓塞栓症、感染、静脈または心臓の穿孔(せんこう)、気胸(ききょう)、出血、心筋の損傷、リードの移動や破損、非常にまれですが手術死亡などがありえます。また、麻酔によるショックが起きる可能性があります。万一の場合、ただちに手術は中止され、必要な処置がとられます。

●手術後の合併症
術後にあらたに発生した病気を術後合併症とよびます。頻度は少ないですが注意が必要ですので、担当医師の指示に従うことが重要です。

感染、アレルギー反応、線維組織形成、出血、血腫(けっしゅ)や膿胞(のうほう)、静脈塞栓、ケロイド形成、びらんや突出、閾値上昇、不適切な治療や不整脈の亢進、ペーシングシステムの予期されない損傷などがありえます。

●入院経過予定(クリニカルパス)
入院の期間、血圧や体温の測定、薬の服用や点滴、処置や検査、安静度、食事の摂取、入浴・散髪、服装、トイレ等、手術での入院経過予定(クリニカルパス・クリティカルパス:入院から退院までの院内でのケア手順)については、個々の症状や入院された施設の方針によって異なります。くわしくは施設の医療関係者や担当医師から説明を受けることになりますので、その指示に従ってください。


入院の準備について(入院の前に心がけたいこと)

入院にあたっての全般的な手続き方法や準備に関しては、施設によって異なりますので、担当医師や医療関係者におたずねください。事前に入院窓口・入院受付などで相談するのもよいでしょう。

●入院予約などの手続きで指示されるもの
入院日の連絡方法、入院申込書や誓約書、身元引き受け書や支払い保証書、入院の案内やしおりなどがわたされます。

●入院時の手続きに必要なもの
保険証・被保険者証(健康、共済、国民健康保険)、印鑑、診察券、各種医療受給者証(老人医療、特定疾患医療、生活保護医療書など)、食事標準負担額減免認定書などが必要になります。公費負担制度(医療扶助、育成医療、厚生医療など)の適用を申請している場合や、適用を受けようとする場合は、入院時に申し出るとよいでしょう。

●入院生活に必要なもの(準備品や携帯品について)
日用品、衣類(寝巻き、下着など)、洗面具、食器類(はし、スプーン、湯のみなど)、衛生品(スリッパ、ティッシュペーパー)などが一般的です。病院備え付け以外の電気器具の使用や持込みは、事前に相談するとよいでしょう。

●その他
入院中の付き添いや看護、食事、寝具、過ごし方(規則・心得)、面会、入院費の支払方法(請求や支払期日・方法など)については、病院により異なりますので医療関係者に相談しましょう。入院や治療にかかった費用に関して、所得税控除の対象として申請をおこなう際には、その証明として領収書の添付を求められます。領収書類は保管しておきましょう。

ペースメーカおよびリードの植込み方法

現在では手術、手技、麻酔方法、ペースメーカ本体装置の形状や大きさ、電子工学技術などが飛躍的に進歩し、より快適に簡単に手術を受けられるようになっています。

植込み方法によって麻酔も異なりますが、一般的には局所麻酔でおこなわれ、鎮静剤や静脈内麻酔なども併せて用いられます。

植込み方法や病状などによって手術にかかる時間も異なります。経静脈リードを使用して胸部にペースメーカ本体装置を植込んだ場合、およそ1~2時間くらいです。

各リードが適切な位置に留置された後、適切に心臓の電気信号を感知し、また適切に電気刺激を心臓へ伝えることを確認するための検査がおこなわれます。リードは動かないように近くの組織に縫合され、その後、ペースメーカ本体装置に接続されます。ペースメーカ本体装置とリードは皮下ポケットに収められます。

手術の間、全てのペーシングシステムが、正常に作動していることを確認するテストがおこなわれます。

病室から手術室へ

 

麻酔前の準備のための薬の注射がおこなわれることもあります。
また、植込み後の感染予防として、抗生物質の内服や点滴がおこなわれることがあります。

多くの場合、病室から手術室、電気生理検査室、またはカテーテル検査室などへは、ストレッチャーと呼ばれる移動式ベット、または徒歩による移動となります。

手術室、電気生理検査室、またはカテーテル検査室などへの入室の際には、確認のために自分の氏名を告げたり、名前の分かるカードを身に付けたりすることがあります。

入れ歯や取り外せる義歯、指輪・時計・ヘアピン・磁石・ピアスなどの装飾品、またコンタクトレンズなどは外すことになるかもしれませんが、補聴器など外してしまうと困るような場合は、担当医師に相談してみてください。入室の際は専用の手術着に着替え、専用の帽子をかぶります(髪の毛はすべて帽子の中に入れた状態)。

手術直前には、血圧計や心電図モニターなどの電極をつけ、仰向けに寝た状態で、ペースメーカ本体装置やリード植込み部分を除いて、全身にカバーをかけて手術がおこなわれます。検査用のカテーテルが挿入されることもあります。いろいろなものが身体に取り付けられますが、安心して慌てないでください。

手術がはじまったら、急に手足などを動かすと非常に危険です。全身の力を抜いて楽にするよう指示があるかもしれません。手術中は、ときどき担当医師や医療関係者から声をかけられることもありますので、何か問題や異常を感じるようなことがあれば、その都度伝え、精神的な安定を心がけましょう。

手術室について

 

ペースメーカ・リード植込み手術直後は、担当医師の許可がでるまで安静となり、術後の注意の説明を受けることになりますが、すべて施設の医療関係者や担当医師の指示に従ってください。また、経静脈リードの場合は、リードが動かないようにリードが植込まれた側の腕が固定されることがあります。

その後、一般の病室に移って十分に回復したと判断された場合は、通常の生活に戻るように指示されます。術後は健康管理に積極的に取り組むことが重要です。

植込み後の感染予防として、術後の一定期間は術部の消毒がおこなわれ、また、入浴なども制限されます。

切開部分の傷は、慎重に観察されます。一般的に縫合糸は、術後6〜7日後に抜糸されます。もし、切開跡に次のようなことが見られたら医師の診断を受けてください。

  • 血液あるいは体液が包帯の周りから滲(にじ)み出てくる。

  • 手術直後の痛みがなくなった後に、切開部分あるいはペースメーカ・リード植込み部位の周囲が痛む。

  • 縫合した切開跡から体液が滲み出る。

  • 術後4~5日あるいはそれ以上経過してから切開跡の周りに赤く腫れて熱っぽくなる部分がある。

  • 切開部分に何か変わったことが見られる。

その他、担当医師、看護師からの指示に従ってください。

退院直前には、ペーシングシステムが適切に作動することを確認するため検査がおこなわれることがあります。また体力の回復にあわせて他の検査を受けるように指示されることもあります。

手術後の手続き

ここでは、ペースメーカおよびリード植込み手術後にどのような手続きがあり、その対応方法などについて簡単に説明します。疑問点などは担当医師にご相談ください。

特定医療機器登録制度(トラッキング制度)

1995年7月1日以降に体内に植込まれ、生命維持に直接関わる特定医療機器について、当初予期することができなかった不具合(故障や不良を含み、期待される性能を発揮しないこと)が発見された場合、その医療機器に関する安全情報が、すみやかに、かつ確実に製造販売承認取得者(製造販売業者など)から患者さんと担当医師に提供されることを目的とした制度です。

ペースメーカおよびリードもこの特定医療機器として厚生労働大臣に指定されています。この制度の利用は患者さんの自由意思となっていますが、同意が必要となります。また、この制度を利用して登録した場合、ペーシングシステムや患者さんに関する一部の医療データは、その製造販売承認取得者(製造販売業者など)にも保管されることになりますが、医薬品医療機器法および個人情報保護法により個人の医療データを守ることが義務付けられています。この制度のための様式は3種類です。

<様式1>
制度説明、および利用・登録のための同意書

登録の希望を確認します。医療機器を使用される本人に記入していただきます。

青色:医療関係者(病院)
黄色:特定医療機器利用者(本人)

<様式2>
個人の医療データが記載される登録用紙

医療機器を利用される方の情報や製品情報、植込みやフォローアップする医療機関の情報などがこの用紙をもとに登録されます。

桃色:販売業者(メーカー)
青色:医療関係者(病院)
黄色:特定医療機器利用者(本人)

<様式3>
住所、氏名、治療施設などに変更が生じた場合のための登録変更用紙

様式2で登録された内容に変更が生じた場合、記入されます。

桃色:販売業者(メーカー)
青色:医療関係者(病院)
黄色:特定医療機器利用者(本人)

特定医療機器植込み記録用紙

ペースメーカおよびリード植込みにあたっては、トラッキング制度として用意されている3種類の様式以外に、製造承認取得者(製造販売業者など)が作成している記録用紙があります。この用紙の記録項目は、トラッキング制度では義務づけられていませんが、制度の趣旨の実施において製造承認取得者などが必要とする情報となっています。主に、ペーシングシステムに関する植込み時の測定値や作動試験情報、初期設定値、リードの組み合わせ、その他に使用された付属機器などが記載されます。

ペースメーカ手帳

日本ではペーシングシステムが植込まれると一般的にペースメーカ手帳が手渡されます。この手帳はペーシング治療の通院記録として定期検診の際にも必要となります。また、他の病院や他の診療科を受診する際、空港などの金属探知ゲートによる検査の際、旅行や海外渡航の際、そして緊急時の際にも役に立ちますので常に携帯することを心がけましょう。

ペースメーカ手帳に記載されていること(日本不整脈デバイス工業会共通フォーマット)

  • 医療関係者へのお願い(他科での診療の際)

  • 個人ID情報、緊急連絡先など

  • ペースメーカ治療病院や連絡先など

  • ペーシングシステムの種類や植込み情報

  • 安全上の注意

  • ペーシング治療の通院記録(管理記録・治療経過)

  • ペースメーカ本体装置の設定、電池やリードの状況など

  • 他国語(英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語など)にてペーシングシステムが植込まれていること

身体障害者の認定

ペーシングシステムを植込まれた患者さんは、身体障害者福祉法に定められた身体障害者の認定を受けることができます。実際にその認定を受けるには、市町村の窓口への申請が必要になります。身体障害者の方を対象にその等級に応じた多くの制度があります。詳しくは市町村の窓口にご相談ください。

身体障害者申請の手続き例

  • 福祉事務所で「身体障害者診断書・意見書」を入手

  • 身体障害者福祉法に基づく指定医師に診断書の作成を依頼

  • 診断書、印鑑、上半身が写っている写真(4×3cm)を福祉事務所に持参し、「身体障害者手帳交付等申請書」を記入

  • 身体障害者手帳は後日交付

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