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Step.4:入院・手術のはなし
植込み手術の流れ(術前・術中・術後)

担当医師の十分な説明のもと、ICDによる治療を受けることとなります。

ここでは植込み手術を受けるにあたって、入院から退院までの流れに関して参考となる情報を取りあげます。疑問点などは担当医師にご相談ください。

■ICD本体装置およびリード植込み手術について

 

手術前に知っておきたいこと

●インフォームドコンセント:説明と同意(書)
病名、手術(検査・処置)名、手術予定日、麻酔方法、手術の目的と方法、その他の手術オプション、手術後の経過予測、手術の危険性と合併症、その他特定医療機器登録制度など、ICD本体およびリード植込み手術について、事前に担当医師よって説明を受けます。その後、手術を受けるかどうかの同意を取り交わします。

●手術時の合併症
手術中の合併症はまれですが、感染、出血、血腫、気胸、穿孔、血栓塞栓症、手術死亡などが報告されています。

●手術後の合併症
感染、アレルギー反応、出血、血腫、静脈塞栓、本体の突出などです。これらの術後合併症はまれですが、おこった場合には必要な措置が取られます。

●入院経過予定(クリニカルパス・クリティカルパス:入院から退院までのケア手順)
入院の期間、血圧や体温の測定、薬の服用や点滴、処置や検査、安静度、食事の摂取、入浴・浴髪、衣類、トイレなど、手術での入院経過予定については、個々の症状や入院された施設の方針によって異なります。くわしくは施設の医療関係者や担当医師から説明を受けることになります。

入院の準備について(入院の前に心がけたいこと)

入院にあたっての全般的な手続き方法や準備に関しては、施設によって異なりますので、担当医師や医療関係者におたずねください。

●入院予約などの手続きで指示されるもの
入院日の連絡方法、入院申込書や誓約書、身元引受け書や支払い保証書、入院の案内やしおりなどがわたされます。

●入院時の手続きに必要なもの
保険証・被保険者証(健康、共済、国民健康保険)、印鑑、診察券、各種医療受給者証
(老人医療、特定疾患医療、生活保護医療など)、などが必要になります。公費負担制度(医療扶助、育成医療、厚生医療など)の適用を申請している場合や、適用を受けようと
する場合は、入院時に申し出るとよいでしょう。

●入院生活に必要なもの(準備品や携帯品について)
日用品、衣類(寝巻き、下着など)、洗面具、食器類(はし、スプーン、湯のみなど)、衛生品(スリッパ、ティッシュペーパー)などが一般的です。施設備え付け以外の電気器具の使用や持込みは、事前に相談するとよいでしょう。

●その他
入院中の付き添いや看護、食事、寝具、過ごし方(規則・心得)、面会、入院費の支払方法(請求や支払期日・方法など)については、施設によって異なりますので医療関係者に相談しましょう。
入院や治療にかかった費用に関して、医療費控除の対象として申請をおこなう際には、その証明として領収書の添付を求められます。領収書類は保管しておきましょう。


ICDおよびリードの植込み方法

植込み方法によって異なりますが、多くの場合局所麻酔でおこなわれ、鎮静剤や静脈内麻酔なども併せて用いられます。植込み方法や病状などによって手術にかかる時間も異なりますが、最も一般的な植込み方法の場合、およそ2〜3時間くらいです。各リードが適切な位置に留置された後、適切に心臓の電気信号を感知し、また適切に電気刺激が心臓へ伝えられることを確認するための検査がおこなわれます。その後、リードは留置した位置から移動しないように近くの組織に縫合され、ICD本体に接続されます。ICD本体とリードは脂肪組織の下に収められます。最後に、全てのICDシステムが、正常に作動していることを確認するテストがおこなわれます。ICDシステムが確実に不整脈を検出し、停止させることができるか確認するために、不整脈を発生させる試験がおこなわれることもあります。

病室から手術室へ

 

麻酔前の準備のための薬の注射がおこなわれることもあります。
また、植込み後の感染予防として、抗生物質の内服や点滴がおこなわれることがあります。

病室から手術がおこなわれる場所までは、ストレッチャーと呼ばれる 移動式のベッドや車いす・徒歩で移動します。

手術室に入る際には、確認のために自分の氏名・生年月日を告げたり、名前の分かるカードを身に付けたりすることがあります。

入れ歯や取り外せる義歯、指輪・時計・ヘアピン・磁石・ピアスなどの 装飾品、またコンタクトレンズなどは外します。補聴器など外してしまうと困るような場合は、担当医師に相談してください。入室の際は専用の手術着に着替えます。

手術直前には、血圧計や心電図モニターなどの電極を付け、仰向けに寝た状態で、全身にカバーをかけて手術がおこなわれます。検査用のカテーテルが挿入されることもあります。

手術中に急に体などを動かすと非常に危険です。何か問題や異常 を感じることがあれば、その都度伝えましょう。

手術後について

 

ICD植込み手術直後は、担当医師の許可が出るまで安静となり、術後の注意の説明を受けることになります。すべて施設の医療関係者や担当医師の指示に従ってください。また、リードが動かないようにリードが植込まれた側の腕が固定されることがあります。

その後、十分に回復したと判断された場合は、通常の生活に戻るよ うに指示されます。植込み後の感染予防として、術後の一定期間は術部の消毒がおこなわれ、また、入浴なども制限されます。

切開部分の傷は、慎重に観察されます。もし、切開跡にかゆみや痛みなどがある場合は、医師の診断を受けてください。

退院直前には、ICDシステムが適切に作動することを確認するため検査がおこなわれることがあります。また体力の回復にあわせて他の検査を受けるように指示されることもあります。

■手術後の手続き

ここでは、ICDおよびリード植込み手術後にどのような手続きがあり、その対応方法などについて簡単に説明します。疑問点などは担当医師にご相談ください。

特定医療機器登録制度(トラッキング制度)

生命維持に直接関わる特定医療機器について、その医療機器に関する安全情報が、すみやかに、かつ確実に製造販売承認取得者(製造販売業者など)から担当医師と患者さんに提供されることを目的に、平成7年7月から開始された制度です。

ICD本体、ICDリード、およびペーシングリードも特定医療機器に指定されています。この制度は、患者さんの同意に基づいて情報を登録します。また、登録された情報は、医薬品医療機器法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)および個人情報の保護に関する法律によって、患者さんの情報を守ることが義務付けられています。

<様式1>
制度説明、および利用・登録のための同意書

登録の希望を確認します。医療機器を使用される本人に記入していただきます。

青色:医療関係者(病院)
黄色:特定医療機器利用者(本人)

<様式2>
個人の医療データが記載される登録用紙

医療機器を利用される方の情報や製品情報、植込みやフォローアップする医療機関の情報などがこの用紙をもとに登録されます。

桃色:販売業者(メーカー)
青色:医療関係者(病院)
黄色:特定医療機器利用者(本人)

<様式3>
住所、氏名、治療施設などに変更が生じた場合のための登録変更用紙

様式2で登録された内容に変更が生じた場合、記入します。

桃色:販売業者(メーカー)
青色:医療関係者(病院)
黄色:特定医療機器利用者(本人)

特定医療機器植込み記録用紙

ICDおよびリード植込みにあたっては、トラッキング制度として用意されている3種類の様式以外に、製造承認取得者(製造販売業者など)が作成している記録用紙があります。この用紙の記録項目は、トラッキング制度では義務づけられていませんが、制度の趣旨において製造承認取得者などが必要とする情報となっています。主に、ICDシステムに関する植込み時の測定値、作動情報、初期設定値、リードの組み合わせ、その他に使用された付属機器などが記載されます。

ICD手帳

日本ではICDが植え込まれると一般的にICD手帳が発行されます。この手帳はICD治療の通院記録として定期検診の際にも必要となります。手帳はICDを使用していることを示すもので、他の病院や他の診療科を受診する際、空港などの保安検査場を通過する際、旅行や海外渡航の際、そして緊急時にも役立ちますのでので常に携帯することを心がけましょう。

ICD手帳に記載されている項目(日本不整脈デバイス工業会共通フォーマット)

  • 医療関係者へのお願い(他科での診療の際)

  • 個人ID情報、緊急連絡先など

  • ICD治療病院や連絡先など

  • ICDシステムの種類や植込み情報

  • 安全上の注意

  • ICD治療の通院記録(管理記録・治療経過)

  • ICD本体装置の設定、電池やリードの状況など

  • 他国語(英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語など)にてICDシステムが植込まれていること

身体障害者の認定

ICDシステムを植え込まれた患者さんは、身体障害者福祉法に定められた身体障害者の認定を受けることができます。実際にその認定を受けるには、市町村の窓口への申請が必要になります。

身体障害者の方を対象に、その等級に応じた多くの制度があります。詳しくは市町村の窓口にご相談ください。

身体障害者申請の手続き例

  • 福祉事務所で「身体障害者診断書・意見書」を入手

  • 身体障害者福祉法に基づく指定医師に診断書の作成を依頼

  • 診断書、印鑑、上半身が写っている写真を福祉事務所に持参し、「身体障害者手帳交付等申請書」を記入

  • 身体障害者手帳は後日交付

運転免許と重症不整脈(危険な・致死性不整脈)

道路交通法にて「発作によって意識障害または運動障害をもたらす病気であって政令で定めるもの」とされる症状を有する場合は、自動車の運転が規制されます。ICDシステム植込み後の自動車運転は道路交通法および警察庁交通局運転免許課長通達によって規制されています。

運転の許可および自動車運転免許の維持には、日本不整脈心電学会あるいは日本心不全学会が主催する研修セミナーを履修した医師によって記載された診断書を警察署へ提出することが必要で、最終的に公安委員会および警察当局が運転の可否を判断することとなります。日本不整脈心電学会・日本循環器学会・日本胸部外科学会の合同検討委員会によって定められた具体的運用指針によって、ICDシステムを植え込まれた患者さんの運転可否に関する基準が示されています。

詳しくは、日本不整脈心電学会のホームページ(http://new.jhrs.or.jp/)にて、「ICD・CRT-D植込み後の自動車の運転制限に関して」をご参照ください。

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