頻脈性不整脈の中には、症状が強く生活に支障をきたすもの、突然死の引き金になるもの、そして命に関わる深刻なものまであり、これらは治療が必要です。また、心臓疾患を持っている人は、特に危険な不整脈が起こりやすい傾向にあります。
ここでは、このような危険な不整脈やその治療法について基本的な 情報を取りあげます。
正常な洞房結節による電気刺激以外に、心室の1カ所、あるいは数カ所から電気刺激が発生して、心室の筋肉がリズムを作り出す病気です。1分間に100回以上の拍動で、3拍以上異常なリズムが続くものを心室頻拍と呼びます。この発作がおこると心臓がポンプの役割を充分に果たせなくなるので、心臓から送り出される血液の量も少なくなります。脳をはじめからだに酸素を含んだ血液が十分に供給されないため、めまいや失神発作をおこしたり、心室頻拍に続いて、心室細動がおこる場合もあります。重篤な場合は意識不明となったり心拍停止をおこします。
心臓の正常な拍動が突然失われ、心室の筋肉が不規則に興奮を始めた状態を心室細動といいます。この発作がおこると心臓は震えているような状態でポンプとしての役割を全く果たせなくなり、脳や全身に血液がほとんど送り出されないため、3〜5秒でめまいがおこり、5〜15秒で意識を失い、3〜5分続くと脳死の状態になるといわれています。心室細動は自然に回復することはほとんどなく、電気ショック(電気的除細動)による治療が必要になります。
心臓のポンプとしてのはたらきが弱まり、十分な血液を送り出すことができなくなってしまった状態を心不全と呼びます。ポンプとしてのはたらきが十分でなくなる原因としては、虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)、心臓弁膜症(しんぞうべんまくしょう)、高血圧性心疾患、心筋症、頻拍性あるいは徐脈性不整脈などのあらゆる種類の心臓の病気や、高血圧、腎臓病、糖尿病などの心臓以外の病気などもあります。血液の流れが悪くなるため、体のいろいろな部分に血液がたまりやすくなり、むくみもでてきます。また、動悸や息切れなども良く見られる症状です。心不全は症状の重さによって分類されます。
心臓自身が活動するためにも血液の循環が必要です。この血液を運んでいる血管は冠状動脈と呼ばれ、心臓の表面を取り巻いています。この血管の一部が狭くなったり詰まったりすると、心臓の筋肉は酸素と栄養が不足して十分に動けなくなってしまいます(その結果、息切れや胸の痛みなどがおこります)。これが狭心症と呼ばれるものです。この状態が進行すると、心臓の筋肉が壊死してしまいます。これが心筋梗塞(しんきんこうそく)と呼ばれるものです。
心臓の筋肉の細胞そのものが変質してしまう病気を心筋症と呼びます。心臓の筋肉が厚みをもってしまう肥大型心筋症、心臓の筋肉が薄くなって広がってしまう拡張型心筋症などがありますが、多くの場合は原因不明で、遺伝、伝染病・感染病、アルコールや薬物中毒などが原因ともいわれています。
心室頻拍や心室細動の原因となる病気が特定されている場合は、まず原因となる病気の治療をおこないます。それでも発作がおこる場合や、原因となる病気が特定できないときに、再発の予防を目的とした治療がおこなわれます。患者さん1人ひとりの病気の危険性、自覚症状の強さや頻度、からだの他の部分への影響の程度、そして、その他の心臓の病気や心臓以外の病気との関わりあいなどを考慮し、1つもしくは複数を組み合わせて治療が進められます。
以下が代表的な治療法です。
①抗不整脈薬(経口投与・飲み薬)
②高周波カテーテルアブレーション(焼灼術)
腕や足の静脈などから専用のカテーテルを心臓に入れ、カテーテルの先端の電極から、高周波のエネルギーによる熱を発して、心臓の異常な回路を焼き切ります。ほとんどの場合、局所麻酔や鎮静薬投与が用いられ、電気生理的検査と併せておこなわれます。
③外科的手術
不整脈の原因となる心臓の筋肉の一部を取り除いたり、異常な回路を切る外科手術で、虚血性心疾患などその他の心臓の手術と併せておこなわれることもあります。
④抗不整脈薬などの静脈内への投与(点滴)
⑤体外式除細動器による電気ショック(電気的除細動)
特に心室細動がおこってしまった場合は、発症後直ちに心肺蘇生を受ける必要があり、体外式除細動器による電気的除細動をおこなうことが唯一の治療法となっています。
⑥ICD治療