ここでは、新しいパートナー、心強いサポーター、ICDシステムとの生活について、知っておかなければならないことを取りあげます。疑問点などは担当医師にご相談ください。
手術から回復するまでには、それぞれの病状によって、数週間から2〜3カ月ほどかかります。担当医師より、植込み部位への注意事項や、他の診療科を受診する際にICDを植え込んでいることを伝えるなど説明がありますので、指示に従ってください。
他の診療科での治療の際、ICDの設定を変更する必要がある場合があります。そのため、ICDが植え込まれていることを伝えることは非常に重要です。
ICDには多くの機能が備わっており、個々の患者さんに合わせた設定にする必要があります。そのため、定期的に外来にてICDの状態を確認することが大切です。ICDの定期検診は、一般的には約3〜4カ月に1度、通常の外来診察とあわせておこなわれます。この際、ICDの設定、作動状況、観察された不整脈の情報、電池の情報、リードの状態などを確認し、適切な設定に調整されます。
ICD本体は内蔵された電池(バッテリ)によって動いています。何年間電池が使えるかに関しては、ICDの設定や実際に治療がおこなわれた回数などによって異なります。残っている電池の量(電池寿命)は、定期検診の際にチェックされて新しいICD本体へ交換することが検討されます。
交換手術は、ICD本体を取り出し交換する手術です。ICD植込み部(ポケット)の皮膚を切開し、リードがICD本体から外されます。これらのリードは今後も適正に機能するか確認された後、新しいICD本体に接続され、ポケットに収納されて切開部は縫合されます。一般的には手術が終わるまでおよそ1〜2時間程度かかります。
リードの寿命は、その種類、植え込まれた部位や状態など、さまざまな条件によって異なりますので一概に何年とはいえません。
リードは、まれに早期に破損する可能性があります。また、心臓に固定されているべきリード電極部分が移動してしまったり、適切に心臓の電気信号を感知できなくなってしまったり、効果的なペーシング治療ができなくなってしまう可能性もあります。
●リードの交換時期
定期検診の際、リードの状態を評価し、本来の機能を果たさなくなると、リードもICD本体と同様に交換されます。多くの場合、不要になったリードはそのまま留置され、新しいリードが植え込まれますが、状況に応じて不要になったリードが摘出されることもあります。
「Step3 ICDシステムのはなし」の「ICD治療」の項にも記載されていますが、ご自身の不整脈やその他の理由によって何らかの症状を感じることもあります。
また、ICD治療、特にショック治療によっても強い自覚症状を感じるといわれています。時として、ICDは、心房細動、心房粗動、心房頻拍といった他の早い不整脈を、心室頻拍や心室細動とみなして不必要なショック治療をおこなうこともあります(不適切作動)。この場合も直ぐに担当医師に相談しなければなりません。不適切作動の原因となる不整脈の治療やICD本体の設定変更が検討されます。
ICDシステムの植込みによって、さまざまな気持ちの変化を経験されるでしょう。最初のうちは、ICDシステムに、不安、おそれや怒りなどの多くの感情を抱くのはごく自然なことです。まず、ご自身の健康についての考え方を心の中で整理する必要があります。ICDシステムと一緒に生活するということは、それが心室頻拍や心室細動を治療するという点において前向きなことと理解しましょう。
しかしながら一部の方は、植え込まれたICDシステムに依存するということで、神経質になってしまうことがあります。ただし、このような感情は一般には長く続かないといわれていて、日常生活に戻るにつれICDシステムに対する信頼感は増していくともいわれています。
ICD治療による衝撃は個人差があり、強い不快感を感じることがあります。不快感に悩まれた際は、担当医師にご相談ください。
どれくらいで通常の生活を再開できるかについて、担当医師から指導があることでしょう。 ICDを植え込んだ後も、以前と同じ生活を送ることが可能です。しかし、ICDが体内にある ことで、すこしだけ制限があります。ICDに影響を与える電気製品の一部、職場の設備環境、 また、医療施設における特定の検査・治療などで注意が必要なものについて、付録の「使用上の注意事項」に詳細がまとめられています。
ICDは、おこってしまった心室頻拍や心室細動を停止させることを目的とした医療機器です。これらの予防のため、多くの場合薬剤などが処方されます。お薬は担当医師の指示に従って必ず飲んでください。
ICDシステムについて、ご家族や周囲のみなさまに理解していただきたいのは次のようなことです。
●患者さんに頻拍が発生すると、ICDシステムはそれを止める治療をおこないます。治療中に患者さんのからだに触れると、ビリビリした感じを受けることがありますが、特に支障はありません。
●ICDによる治療中、患者さんのからだがひきつったり、ビクッとしたりしても慌てないでください。もし患者さんに発作の徴候が見られた場合、患者さんがふらついたり、倒れても何かにぶつかって怪我をしないようご配慮ください。
●患者さんがICDのショックを受けたときは、担当医師に連絡してください。患者さんの気分がすぐれないときも同様です。
●性生活については、担当医師に確認してください。
●いつでも患者さんと連絡が取れるようにしておいてください。
●緊急時に備えて、かかりつけの病院などの電話番号を電話機の近くに置いてください。
●退院後の生活を安心してすごすために、ご家族の協力が必要です。定期検診や薬の服用など担当医師からの指示を患者さんがきちんと守れるように、ご家族のご支援が必要です。ご協力をお願いします。
家庭内や屋外などの一般の生活環境、また医療施設などの特殊な環境では、ICDが体内 にあることで少なからず制限があります。 詳細は付録の「使用上の注意事項」を参照してください。